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[No.4] YAMAHA SR400 2019-2020 ★ECUチューニング開発★

[No.4] YAMAHA SR400 2019-2020 ★ECUチューニング開発★

作業の目的

1978年から生産が開始され、老若男女問わず多くのファンに愛され続けているYAMAHA SR400
近年の排ガス規制の強化に伴い、幾度となく存続が危ぶまれてきましたが、なるべくルックスを変えずに仕様変更でつながれてきた歴史あるバイク。
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しかし、これまで以上に厳しい排ガス規制となる「EURO5規制」の対応義務化が迫る2021年、残念ながら、43年の歴史に幕を閉じることとなりました。

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昔ながらのルックス、キック式エンジン始動などは、インジェクション化された今でも継承されております。
今回は、「SR400」をこよなく愛するオーナー様からの切なる想いから、オーナー様の協力のもと、「YAMAHA SR400 2018-2019」の「ECUチューニング開発」がついに実現しました。

(参考) - 車種別サービスメニュー [YAMAHA SR400 2019-2020]
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お客様のご要望としては、「現代のSR400」を乗りやすいまま、「昔のSR400」のように、さらにビックシングルらしい面白いバイクにしたいということでしたので、どのようにすれば「車検対応の範囲内で昔のSR400」に近づけることが出来るか。
MotoJPの強みである「マップ解析」を駆使して、「YAMAHA SR400 2019-2020年 国内仕様」の開発作業を一からスタートし、"効果が見込める調整"が行えるように準備を進めていきます。
※空冷式ですので、「ラジエーター冷却ファン作動温度」のパラメーターは存在しませんが、基本的には他の車両と近い制御が予想されます

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「ECU本体」は「シート下、バッテリーの隣」に設置されています。
まずは実走行のシミュレーションが可能なシャーシダイナモを使って研究を重ねてみました。

作業風景

シャーシダイナモで走行テスト(調整前) [No.4] YAMAHA SR400 2019-2020 ★ECUチューニング開発★

「SR400」に「馬力」を求めてはいけないのかもしれませんが、やはり、無いよりあった方がうれしい「馬力」
「メーカー公証馬力:24PS(クランク軸)」。何事もないものねだりをしてはいけませんが、「ひと昔前のSR400」の方が少し馬力が出ていたことから、このエンジンはもう少し頑張れるはず。

まずは、「SP忠男パワーボックスパイプ(※サイレンサーはノーマル)」が装着された「純正ECU状態」のパワーグラフを見てみましょう。
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本来、シャーシダイナモ上でローラーを回した後輪出力値」と「メーカー公証値を比較するのは殆ど無意味であると考えますが、ここではあえて、比較してお伝えします。
今回、「ピーク馬力:23.5HP(後輪)」が得られましたが、PS換算すると「23.83PS(後輪)」となります。(※1 HP ≒ 1 * 1.014 PS)

つまり、ほぼ「メーカー公称値」が後輪出力で得られています。(※通常は15±5%程度のロス馬力が発生します)
一般的に「メーカー公称値」は、管理された状況下で測定された、いわば「理論値」に近いことから、よほどエンジンのコンディションが良いのか、「SP忠男パワーボックスパイプ」の性能が良いのか、これまで、他のバイクで「殆どノーマル車両」から「メーカー公称値」に近い数値が出たことが殆どなかったため、これには少し驚きました。

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[2021/03/04 訂正]
 ブログ公開時点では、誤って「SP忠男フルエギゾーストマフラー(JMCA対応)」と表記してしまいましたが、
 正しくは「SP忠男パワーボックスパイプ」(+純正サイレンサー)」でございました。お詫びして訂正いたします。


ただし、「中間に大きなトルクの落ち込み」があることや、「高回転におけるトルクの急激な減退」が気になりますが、なんとなく、まだまだ改善の余地がありそうな気がします。

早速、改善してみましょう。

シャーシダイナモで走行テスト(調整後) [No.4] YAMAHA SR400 2019-2020 ★ECUチューニング開発★

「ECUチューニング(燃料マップ調整を除く)」を何度も実施し、いろいろな意味で納得がいくまで「トライ・アンド・エラー」を繰り返したところ、、、

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なんと!!!「ピーク馬力:25.2HP(後輪)」と表示されました!!
ピーク馬力は「1.7馬力(約7.2%)」も向上したことになります。これは「200馬力のバイク」で例えると「14馬力の向上」に匹敵します。
何度計測しても「±0.2HP以内」に収まるので、これは確実な「メーカー公称値超え」を想像させます。
しかも、気になる「中間の大きなトルクの落ち込み」や「高回転におけるトルクの急激な減退」が改善されています。素晴らしいですね♪

実際、シャーシダイナモ上で運転していても、明らかにトルクが太り、力強さが発揮されている印象があり、エンジンのふけ上がりが軽く感じました。
グラフを見なくても、感じられるものがありましたので、これは良い傾向だと思われます。

しかし、「MotoJPのECUチューニング」は馬力だけ追及するものではありません。
もう少し乗りやすい方向に調整を行いたい思いで、さらに煮詰めていきます。

シャーシダイナモで走行テスト(空燃比測定) [No.4] YAMAHA SR400 2019-2020 ★ECUチューニング開発★

通常の「ECUチューニング」ではここまでの作業(パワーチェック、空燃比測定など)は実施しておりませんが、今回は「開発」や「単気筒エンジンのデータ取得」などを目的してとして特別に実施させていただきました。

全体域で空燃比測定が可能な「ワイドバンドO2センサー」をマフラーに取り付け、「純正の燃料噴射制御」をさらに詳しく見ていきます。

余談ですが、最近まで、昨今の情勢により「シャーシダイナモ」の稼働を停止しておりましたが、その間、新しい計測装置(データロガー)を導入いたしました。
より高精度なデータ収集が可能となるため、車種(高速な診断通信が可能なもの)によっては、「ECU内部の様々な情報(RPM、TPSなど)」を得ることができます。

幸い、こちらの車両は「CAN通信によるOBD2」に対応しているため、「診断コネクター」に接続することで、「様々な情報」を見ることが出来ます。

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ここでは方法や具体的なデータの公開は致しませんが、例えば「MAP(吸気マニホールド内の絶対圧)」や「TPS(スロットル開度)」の測定結果などから「吸入空気量(推定値)」を計算することができ、これを「他のファクター(RPMなど)」を軸に分布化することで、「エンジン特性」をある程度理解することが出来ます。

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※この表・グラフは空燃比分布図ではりません

このような点を考慮したうえで、「点火時期」や「空燃比ターゲット」などの方向性を適切に決定することで、より高精度な調整が可能になるものと考えております。
前置きが長くなりましたが、ここから本格的な調整を開始します。

まず、気になったのは「アクセルオフ時の燃料噴射カット制御」です。
インジェクション車両は「燃料カット制御」が介入するため、アクセルオフ時は「エンジンブレーキが強く」、アクセルオン時は「ドンツキ、ギクシャク感が強く」出てしまいます。

「燃料カット制御」は主に「エンジン回転数」による制御のため、とある回転数を跨ぐと復帰しますが、測定した「空燃比数値(LEAN → ストイキ)」から「3,000rpm」あたりに「復帰ポイント」があると予想します。
つまり、「3,000rpm」を超えて運転することで、「燃料カット制御」により「ドンツキ」や「強いエンジンブレーキ」を感じることとなります。

そこで、今回は他のバイクでお馴染みの「アクセルオフ時燃料カット調整(燃料復帰ポイントの閾値を調整)」を実施することで、この回転数を超えた運転を行った場合の運転性向上が見込めます。
「SR400でそんな運転しないよ!!」という方を除き、一定程度は効果があると思いますが、恩恵を授かれば授かる分、捉え方によっては"無駄な燃料噴射"が発生するため、経済や環境のことを考えると、多少のデメリットも存在することを忘れてはいけません。

もちろん、「サーキット走行」では「エンジンブレーキ・コントロール」が非常に大事であったりするので、ある程度の緩和は嬉しく思われることが多いです。
また、「スロットル全閉から5%程度開いた時」の「ドン!」というショックも、緩和してくれた方が有難かったりします。
※とはいえ、「SR400」はエンジンが回転する慣性力が大きいため、わざわざ緩和せずとも、幾分かは転がってくれたりします

それでは、空燃比計測にうつります。
「シャーシダイナモ上」では、「燃料カット」「O2センサーによるフィードバック補正」「エア・インダクション・システム」などの制御を無効化(※)したうえで、正確な空燃比を測定したいと思います。(これらが有効の場合、空燃比が正確に取得できないことがあり、燃料噴射量基本マップの調整に支障をきたすため)
※上記内容の変更は「シャーシダイナモ上での開発用」に特別に実施するものであり、一般的なECUチューニングでは一切実施しておりません。

2輪車では、4輪車のような「エアフロー・センサー」は採用されず、「スロットル・スピード方式」と「スピード・デンシティー方式」を組み合わせ、様々な演算を行ったうえで、全インジェクターの噴射時間「燃料噴射総量」を決定します。これらをどのような配分で演算するかは、その時の走行条件によって変化するため、本来、これら2つのマップについて「マップの偏り」を考慮しないで調整するべきではありません。

MotoJPでは、「スロットル・ポジション」や「マニホールド絶対圧」などのファクターで変化する「スロットル・スピード方式による基本マップ」と「スピード・デンシティー方式による基本マップ」の「バイアス」を毎秒200回のサンプリング・レートで監視しながら、先に紹介した方法により決定した「空燃比ターゲット」に従って、適切な燃料噴射量の補正を繰り返すことで、「様々なスロットル・ワーク」に対応出来るような燃料噴射量調整を目指しております。

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上記に挙げた点を考慮し、「測定データ評価」→「燃料噴射量補正」→「測定データ評価」を繰り返し行いました。ここに「燃料噴射量」の補正前後の「大雑把な空燃比分布(薄い、適正、濃い)」を示します。
※「SR400」が空冷式エンジンであることを考慮し、「空燃比ターゲット(適正値)」を他車と比べて「RICH(濃い)」に設定しております

その結果、「O2センサーによるフィードバック制御」などが無効化された状態において、「補正前(上側)」では全体的に「RICH(濃い)」傾向があることが分かりました。
もちろん、「排気システムの変更」や「測定環境」なども影響している可能性がありますが、傾向としてはこんな感じです。

一方、「補正後(下側)」のデータでは、殆どの領域で「適正」に落ち着きました。(※加速時などを考慮し若干濃くしているところもあります)

実際、シャーシダイナモ上では、どのような「スロットルワーク」に対しても、エンジンがしっかり反応している印象を受けました。
もちろん、吸排気仕様(マフラー、エアフィルター)、測定環境によっては、このような結果にならないこともありますが、今回のケースは計算通りにうまく行った感じです。

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※最後の「オレンジ色線」の示す通り、わずかに高回転の伸びが増えました

< 結 果 >
 [後輪馬力]
  オレンジ線: ECUチューニング + 燃料噴射量の最適化 … 25.4HP
  赤線: ECUチューニングのみ … 25.2HP
  黄線: 純正ECU … 23.5HP
 [トルク]
  紫線: ECUチューニング + 燃料噴射量の最適化
  灰線: ECUチューニングのみ
  青線: 純正ECU

それでは、シャーシダイナモ上での試験はこれで終了し、いよいよ「実走行による評価」に移行します。

結果・スタッフの感想 [No.4] YAMAHA SR400 2019-2020 ★ECUチューニング開発★
予めお伝えしたいのが、「純正状態」でも非常に乗りやすく、「シングルエンジン独特な鼓動感」が非常に心地よかったです。
400ccもあるので、どこからでも大きなトルクが発生し、「非常に扱いやすいエンジン」だと改めて認識しました。
43年も続いた長い歴史を感じながら、少し寂しい気持ちでゆっくりと公道を走行しておりました。

ネガティブな点としては、「少しスポーティーに走行した時の「ドンツキ」「エンジンブレーキ」、中速・高速の伸び(シャーシダイナモ上で感じた内容通り)が今一つであること、発進トルクが少し薄い?と感じたところです。
特に、「キック式エンジン始動」なので、エンストこいたら後続車両にすいませんと謝って、デコンプ引きながら上死点確認しながら急いでキックしなければなりませんからね。。。
なお、振動に関しては、ミラーが何度も緩んでこっちを向きましたが、こういうバイクであることを理解しておりますので、これも個性ということで納得しています(笑)

そして、「ECUチューニング後」では、"あくまで個人的な感想"ですが、「全く違うバイク?」と思うくらいトルクが太っており、エンジンが吹け上がるスピードがかなり違っていました。高速道路の合流加速などもスムーズで、ストレスがありません。
また、心なしか振動が減った?気がします。恐らく、これは「燃料噴射量の補正」が効いているのでは?と感じております。
ドンツキ」「エンジンブレーキ」も緩和しており、うれしいのは「発進トルク」が増えておりました。
うっかり「エンスト」の機会が減るのは、危険防止にも貢献するのでは?と考えます。
燃料噴射量の補正」により「無駄な燃料噴射」も必要最小限に絞っているので、ひょっとしたら燃費の向上も期待できたり?
もちろん、そのような効果を狙っているわけではありませんが、こればかりはオーナー様の評価をお待ちするしかありません。

仕事柄、普段は「スーパー・スポーツバイク」や「メガスポーツ・ツアラー系」まで頻繁に乗りますが、正直、すごく欲しくなりましたね^^;
昔のSR400(キャブレーター車両)には乗ったことありませんが、恐らく、こんな感じなバイクなんじゃないかなー?違うのかな?などと想像しながら、多くの距離を走って、無事試運転が終了しました。

最後に、気になる「FIエラー発生」もなく、「排ガス濃度(CO/HC)」も基準値を大幅に下回る値に収まっておりました♪

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新しく導入したHORIBAの排ガステスター(校正済)ですが、棒を一番奥まで入れてますが、「ECUチューニング(燃料噴射量の補正)」を実施後も、壊れているんじゃないか?と思うくらい低い数値です。最近のバイクはすごいですね。
試しに隣においてある「サーキット専用バイク(触媒レスマフラー)」を測定したら、「CO:1.6% HC:500ppm」なので、問題なく機能していると思われます(笑)

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100km程走行も、気になる「FIエラー」は一切ありません♪

歴史ある一台の開発に携われたことを大変うれしく思います。
「オーナー様」が実際に乗って喜ばれる時を心待ちにしております。
YAMAHA SR400 2019-2020 ECUチューニングはMotoJPにお任せください♪

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