[No.4] YAMAHA YZF-R3 2018-2021 燃料マップ調整(現車セッティング)
セッティング車両の詳細
作業風景
結果・作業後の感想
今回は「YSP杉並北」スタッフ様が普段サーキット走行で利用されている車両について、燃料マップ調整(現車セッティング)をご依頼いただきました♪
<YSP杉並北>
https://www2.yamaha-motor.co.jp/Locator/Mc/detail/sno/82339
全体的に乗りやすさを向上したいというご要望でしたが、排気量が比較的小さい車両におけるサーキット走行では、トルクが非常に重要だったりしますので、全域をしっかり調整させていただきました。
結果は「吸排気、エンジン仕様」「現状の空燃比」に依存するため、果たしてどうなるか。
「Akrapovic Full Exhaust」に合わせた、燃料マップ調整(現車セッティング)の実施により、実施前と比較して「ピーク馬力(後輪)」が0.5[HP]向上しました♪
※どちらのグラフも「ECUチューニング(基本メニュー)」は実施済み
「ピーク馬力(後輪)」の数値だけを見ると、効果は「それだけ?」と思われる方もいらっしゃるかと思いますが、中回転(グラフ中央付近)では「0.5 ~ 1.0[HP]」以上も向上している領域がたくさんあります。
この領域は、特に加速時によく利用するエンジン回転域ですので、トルク上昇分をすべて足し合わせると、低回転 ~ 高回転にかけてエンジン「総仕事量」はかなりの向上となりますことから、サーキット走行ではアドバンテージになるのではないでしょうか。
ここに、スロットル全開時(WOT)の空燃比チャート(燃料補正前後)を示します。
今回、後述のロガー・データの解析結果から算出した「推定吸入空気量」などから今回「WOT」ではターゲット空燃比を「13.0」と設定しました。
補正前(オレンジ線)では、中回転(8,000 - 10,000rpm)の空燃比が「13.68」と「LEAN(薄い)」傾向でしたが、燃料噴射量の補正により、空燃比が概ね目標値に落ち着いたことから、この領域におけるトルクが向上したものと考えられます。
しかし、取得した「空燃比テーブル」全体を見渡すと、「スロットル全開時(WOT)」はそれほど大きな問題はなく、「スロットル開度」が小さい領域においての空燃比の乱れが目立ちました。
例えば、「アクセル全閉[あるいは一定維持状態] ~ じわじわ開く、急激に開く」などと「素早い応答性」が求められる領域においては、空燃比がRICH(濃い)になったり、LEAN(薄い)になったりと入り乱れる状況が多くございました。
これにより、現状はアクセルを煽ってもワンテンポ遅れる反応といった非常に乗りづらい状態になっております。これは、吸排気仕様(マフラー、エアフィルターなど)が純正品から変更されていることから、吸気システム内に流入する空気量が増減し、純正の燃料噴射量では過不足が出たものと考えられます。
このような原因によって発生した症状に関しては、様々な「スロットル入力」に対する「吸入空気量の変化」に対して、常に最適な燃料噴射量となるような調整を行う必要があります。
4輪で見られるような「エアフロー・センサー」が存在しない2輪車においては、「スロットル・スピード方式」と「スピード・デンシティー方式」の組み合わせにより、燃料噴射量(フィードバック制御前)が決定されますが、このような状況に対応できるような燃料噴射量の補正を行うことは簡単ではありません。
※吸排気やエンジン仕様によっては、燃料噴射量の最適化では良くならないケースも多々ございます
このような複雑な条件下においては、ECUの仕組みにより、それぞれの方式から算出された燃料噴射量が適切なバランスとなるよう決定されるため、2方式の偏りを考慮した調整が求められます。
※キャブレター・セッティングで例えると、スロージェット、ジェットニードル、メインジェットの領域における繋がりを意識した調整をするシーンに似ております
今回、新しいデータ・ロガーの導入により、「YAMAHA YZF-R3 2018-2020」では、診断コネクター経由から200Hz(毎秒200回)のサンプリングレートで様々な情報が取得できるようになりました。
また、MotoJP独自の技術により、「各種フィードバック制御の無効化(※)」や「推定吸入空気量」、「2方式の偏り」を確認しながらの補正が可能となったため、様々な状況変化における「リアルな空燃比の監視」、「偏りを考慮した燃料噴射量の補正」などが行えるようになりました。
※「フィードバック無効化」は「シャーシダイナモ上でのセッティング用」に特別に実施するものであり、一般的なECUチューニングでは一切実施しておりません。
これらを駆使して、「空燃比確認 ~ 噴射量補正 ~ 空燃比確認 ~ 」を繰り返したところ、シャーシダイナモ上では、補正前と比べ、様々なアクセル入力に対する「エンジンの応答性」が格段に向上しているように感じました。
後日、オーナー様より、「エンジンのピックアップ、コントロール性が格段に良くなった。細かいアクセル入力に対してしっかり反応してくれるので、サーキット走行が楽になった。また、エンジンのふけ上りも速くなった」と評価いただきました。
「燃調(燃料噴射量の調整)」とは、シャーシダイナモ上の「馬力」や「トルク」の指標だけでは測れない実に奥が深いものであると考えており、非定常状態における調整の困難さは計り知れません。それゆえ、オーナー様にこれらの改善を実際のライディングによって感じていただけたことは大変うれしく思います。
サーキット走行でのタイムアップにつながれば幸いでございます♪
上記でご紹介したような「現車セッティング(便宜上、「現車セッティング2.0」とします)」の実施は「特定の車種」に限られますが、興味がある方は下記「ECUチューニング 現車セッティング相談について」より「受付状況」、「受入条件(※)」などご確認のうえ、お気軽にお問い合わせください♪
※燃料マップ調整(現車セッティング)では、スタッフの安全や近隣住民への配慮により受入条件を設けさせていただいております
ECUチューニング 現車セッティング相談について
fuelsettings.html
<YSP杉並北>
https://www2.yamaha-motor.co.jp/Locator/Mc/detail/sno/82339
全体的に乗りやすさを向上したいというご要望でしたが、排気量が比較的小さい車両におけるサーキット走行では、トルクが非常に重要だったりしますので、全域をしっかり調整させていただきました。
結果は「吸排気、エンジン仕様」「現状の空燃比」に依存するため、果たしてどうなるか。
「Akrapovic Full Exhaust」に合わせた、燃料マップ調整(現車セッティング)の実施により、実施前と比較して「ピーク馬力(後輪)」が0.5[HP]向上しました♪
※どちらのグラフも「ECUチューニング(基本メニュー)」は実施済み
「ピーク馬力(後輪)」の数値だけを見ると、効果は「それだけ?」と思われる方もいらっしゃるかと思いますが、中回転(グラフ中央付近)では「0.5 ~ 1.0[HP]」以上も向上している領域がたくさんあります。
この領域は、特に加速時によく利用するエンジン回転域ですので、トルク上昇分をすべて足し合わせると、低回転 ~ 高回転にかけてエンジン「総仕事量」はかなりの向上となりますことから、サーキット走行ではアドバンテージになるのではないでしょうか。
ここに、スロットル全開時(WOT)の空燃比チャート(燃料補正前後)を示します。
今回、後述のロガー・データの解析結果から算出した「推定吸入空気量」などから今回「WOT」ではターゲット空燃比を「13.0」と設定しました。
補正前(オレンジ線)では、中回転(8,000 - 10,000rpm)の空燃比が「13.68」と「LEAN(薄い)」傾向でしたが、燃料噴射量の補正により、空燃比が概ね目標値に落ち着いたことから、この領域におけるトルクが向上したものと考えられます。
しかし、取得した「空燃比テーブル」全体を見渡すと、「スロットル全開時(WOT)」はそれほど大きな問題はなく、「スロットル開度」が小さい領域においての空燃比の乱れが目立ちました。
例えば、「アクセル全閉[あるいは一定維持状態] ~ じわじわ開く、急激に開く」などと「素早い応答性」が求められる領域においては、空燃比がRICH(濃い)になったり、LEAN(薄い)になったりと入り乱れる状況が多くございました。
これにより、現状はアクセルを煽ってもワンテンポ遅れる反応といった非常に乗りづらい状態になっております。これは、吸排気仕様(マフラー、エアフィルターなど)が純正品から変更されていることから、吸気システム内に流入する空気量が増減し、純正の燃料噴射量では過不足が出たものと考えられます。
このような原因によって発生した症状に関しては、様々な「スロットル入力」に対する「吸入空気量の変化」に対して、常に最適な燃料噴射量となるような調整を行う必要があります。
4輪で見られるような「エアフロー・センサー」が存在しない2輪車においては、「スロットル・スピード方式」と「スピード・デンシティー方式」の組み合わせにより、燃料噴射量(フィードバック制御前)が決定されますが、このような状況に対応できるような燃料噴射量の補正を行うことは簡単ではありません。
※吸排気やエンジン仕様によっては、燃料噴射量の最適化では良くならないケースも多々ございます
このような複雑な条件下においては、ECUの仕組みにより、それぞれの方式から算出された燃料噴射量が適切なバランスとなるよう決定されるため、2方式の偏りを考慮した調整が求められます。
※キャブレター・セッティングで例えると、スロージェット、ジェットニードル、メインジェットの領域における繋がりを意識した調整をするシーンに似ております
今回、新しいデータ・ロガーの導入により、「YAMAHA YZF-R3 2018-2020」では、診断コネクター経由から200Hz(毎秒200回)のサンプリングレートで様々な情報が取得できるようになりました。
また、MotoJP独自の技術により、「各種フィードバック制御の無効化(※)」や「推定吸入空気量」、「2方式の偏り」を確認しながらの補正が可能となったため、様々な状況変化における「リアルな空燃比の監視」、「偏りを考慮した燃料噴射量の補正」などが行えるようになりました。
※「フィードバック無効化」は「シャーシダイナモ上でのセッティング用」に特別に実施するものであり、一般的なECUチューニングでは一切実施しておりません。
これらを駆使して、「空燃比確認 ~ 噴射量補正 ~ 空燃比確認 ~ 」を繰り返したところ、シャーシダイナモ上では、補正前と比べ、様々なアクセル入力に対する「エンジンの応答性」が格段に向上しているように感じました。
後日、オーナー様より、「エンジンのピックアップ、コントロール性が格段に良くなった。細かいアクセル入力に対してしっかり反応してくれるので、サーキット走行が楽になった。また、エンジンのふけ上りも速くなった」と評価いただきました。
「燃調(燃料噴射量の調整)」とは、シャーシダイナモ上の「馬力」や「トルク」の指標だけでは測れない実に奥が深いものであると考えており、非定常状態における調整の困難さは計り知れません。それゆえ、オーナー様にこれらの改善を実際のライディングによって感じていただけたことは大変うれしく思います。
サーキット走行でのタイムアップにつながれば幸いでございます♪
上記でご紹介したような「現車セッティング(便宜上、「現車セッティング2.0」とします)」の実施は「特定の車種」に限られますが、興味がある方は下記「ECUチューニング 現車セッティング相談について」より「受付状況」、「受入条件(※)」などご確認のうえ、お気軽にお問い合わせください♪
※燃料マップ調整(現車セッティング)では、スタッフの安全や近隣住民への配慮により受入条件を設けさせていただいております
ECUチューニング 現車セッティング相談について
fuelsettings.html